臭くなるのが怖い

 要するに加齢が怖い。つまりおじさんになるのが怖い。

 

 偶に電車でとてつもない異臭を放っているおじさんがいる。新手のバイオテロの可能性を疑うレベルの。ただその異臭の正体は主に加齢臭であり、個人差はあれど男性は歳を重ねていけばいずれはそれを発してしまうのだ 。

 

 恐ろしい。正直言って死ぬことよりも恐ろしく感じる。死は人にとって一つの救済でもあるが、加齢臭は人を地獄に叩き落とすのみだ。

 

 そもそも加齢臭を発することによって周りの人にも迷惑をかけるのが嫌だ。加齢臭を発している本人も嫌だし、同じ空間を過ごす周りの人も嫌な思いをする。登場人物全員嫌な思いをするのだ。こんな悲しい物語も無い。

 

 それに加齢臭が出てくるのが40歳前後っていうのが納得いかない。

 早くないか。平均寿命はどんどん伸びているんだぞ。伸びた寿命に比例して加齢臭の発症時期が遅くなるならまだ許せるけどそういう訳じゃないらしいじゃないか。

 つまり寿命が伸びるってことは人の異臭を放つ期間がどんどん伸びてるってことだ。何この生き地獄。

 

 ネットで加齢臭のことを調べると対策とか予防の仕方が山ほど出てくる。

 しかし対策とか予防は出来るけど根絶する薬や方法は無いらしい。人類は無力。ハゲを治す薬と同じレベルでの早期の開発が待たれる。

 

 僕が加齢臭を発するようになるまでに解決してなかったらどうしよう。

 自分が臭くなるなんて想像したくもないけど、きっとそれまで着てた服を全て燃やして、風呂場で薄皮一枚剥がれるほど背中を擦って、浴槽一杯に無数の詰替用ファブリーズを注いで、頭のてっぺんまで浸かって肺が無呼吸の許す限り目一杯ファブ浴をするだろう。

 

 そんな未来はイヤである