すれちがい通信簿

最終回の再放送は無い

思い出音楽 川本真琴『川本真琴』

 高校生の頃の話だ。YouTubeニコニコ動画は僕に新しいリスニング体験をくれた。具体的に言うと子供の頃のアニソンをよく聴くようになった。懐かしアニソンオムニバス動画みたいなの。まあ世代は違えど多くの人が一度は体験したことがあると思う。

 そういうのを聴いてて出会ったのが川本真琴の「1/2」という曲。るろうに剣心のアニメのオープニングに使われていた曲である。聴いた時は「ああ、るろ剣のオープニングだよ。懐かしっ」くらいのもん。特別この曲が響いたとかではなかった。もちろん良い曲だとは思ったがその時は川本真琴という人物を調べるまでには至らなかった。

 さて、僕がどうやって川本真琴の『川本真琴』というアルバムに出会ったのかというと、完全に偶然である。YouTubeで「1/2」との懐かしの邂逅を果たしてからしばらく時が経ったある日、ブックオフの250円コーナーで一瞬目に止まったのが『川本真琴』だった。記憶の片隅にあった文字列に反応したのだろう。川本真琴という文字を見ても最初は「なんだったけこれ…」状態だった。少ししてるろ剣の人だと思い出した僕は250円という値段の手軽さからそのまま手に取り帰宅した。

 その時は「1/2」だけに250円払った気でいた。他の曲に興味もなかった。「愛の才能」は大ヒットしたらしいが発売当時の僕はチビッコだったのでそんなことは知らなかった。だから岡村靖幸のプロデュースがどうとかも全く知らなかった。というか岡村靖幸に関しては今もよく知らない。通らなかった。おクスリ和製プリンスというイメージしかないが、この先いつか聴くことがあるのだろうか。

 まあそんなことは置いておいて、要するにこのアルバムに対する事前知識はゼロだった。そんなことだから聴いてビックリ、名盤だった。「DNA」とか「タイムマシーン」の名曲にも驚いたが一番驚いたのは唯一知っているはずの「1/2」だった。「1/2」はアルバム『川本真琴』のラストトラックなのだが、アルバム通して聴くとそれまでと印象が変わりなんだか切ない曲に聞こえた。シングルカットされた曲がアルバムだと違った印象を受けることはよくあることである。それでもアニメのオープニングとして使われ、明る目の曲だと思っていた曲が180度違う印象に変わるとは。そしてこの曲がアニメのオープニング曲としてもしっかり機能していたことにまた驚いた。

 あまりの衝撃に次の日僕は学校で音楽好きの友達6人に名盤である旨と「1/2」の衝撃をメッチャ早口で伝えた。全員が川本真琴と「1/2」というキーワードだけではポカーンだったが、るろ剣のオープニングであることと「1/2」の出だしを歌ったらすぐに理解してくれた。良い友達である。

 一度に全員に貸すことは出来ないので無理矢理買わせた。250円だからいいだろと。こうして『川本真琴』と「1/2」の衝撃は瞬く間に広がり、僕らの間でプチ川本真琴ブームが起きた。

 長々と書いてきたがこの『川本真琴』というアルバムは、YouTubeの懐かし系動画から過去の名盤にめぐり逢い、更に一つの曲を通じてアルバムとアニメのオープニングという両媒体のマジックみたいなものを感じるという貴重体験を与えてくれた一枚であり、また、それを数少ない友達と共有したという中々に思い出深く、僕個人の音楽の好みを超えた一枚なのだ。