料理のコクが分からない

 分かんないよな?なんだよコクって。カレーの隠し味にオイスターソースとかコーヒーを入れるとコクが増すとか言うけど、そもそものコクが分からねえから増えたかどうかも分からん。俺は馬鹿舌だが美味くなったかどうかは分かるよ?しかしコクは分からん。なんで素直に美味くなったと言わないんだ。

 終いにゃコクが出て味に深みが増すとかも言うだろ。コクも分かんねえのに深みときたもんだ。まず生まれてこの方、味を立体的に捉えたことがねえよ。「味に深みがありますね~」はよく聞くけど「味が浅いですね~」って言ってる奴は見たことがない。だから俺は料理の感想にコクと深みを使うやつを一切信用しない。TVの食リポはまあ許そう。仕事だし、どう美味いかを伝えなきゃいけないし。まあコクと深みを使った時点で俺には伝わらんけどな。

 ただ現実に目の前で同じもの食べてる奴が「これコクと深みがあって美味しい」とか言い出したら反射的に頭を引っ叩くかもしれない。味の感想なんて不味い、美味い、超美味いだけでいいんだよ。

 最初にコクとか深みって言い出した奴は絶対馬鹿の見栄っ張りだと思う。食の知識も言語能力も無いくせに馬鹿がなんとかそれらしいことを言おうとして出てきたのがコクだよ。多分。

 コクを使ってる奴は卑怯者だよ。人間の味覚は一人一人個体差があってそれを共有する術が無いことをいいことになんだかよく分からない言葉で我々を煙に巻くと同時に、「私は味というものをよく分かっている人間ですよ」的なセルフプロデュースを行っているのだ。騙されてはいけない。

 いいか、コクとか深みを使ってる奴らに告ぐ。いつか人間の体が義体化してネットワーク上で感覚が共有出来るようになったらコクと深みがなんなのかをキッチリ説明してもらうからな。そんな技術は俺が生きてる間には実現しないだろうが俺は忘れねえからな。来世だろうがそのまた次だろうが地獄の果てまで追い回すから覚悟しておけ。

 絶対逃さないからな。